環境問題で重要な富栄養化について考えてみましょう。
ます、始めにクイズです。
次の(1) 〜(3) の湖のうち、魚がたくさん釣れる可能性が高いのはどの湖で しょうか。
(1) 底まで見通せるほど、水が透明できれいな湖。
(2) 豊富にあるケイ藻のせいで濁っている湖。
(3) 表面が絵の具をこぼしたょうに緑色になっている湖。
富栄養化という言葉だけを聞いて、どんなイメージを持ちますか?
栄養が富むという良いイメージを持つ人が多いのではないでしょうか?
私も、そうでした。
ところが、そうではないのです。
食物連鎖のバランスが保たれていればいいのですが、富栄養化してバランスが崩れてしまうと色々な問題が起きるのです。
クイズの正解は、(2)です。
食物連鎖では、植物プランクトン(光合成を行う微生物)を動物プランクトンが食べて、それを小魚が食べて、それを大きな魚が食べ、その魚が死ぬと微生物によって分解されて、、という関係になりますが、
(1) のような水が透明できれいな湖では、養分が少ないので、植物プランクトンも生息しにくいですから、結局、魚も生息しにくいのです。
また、(3) のような表面が緑色になっている湖は、水中の植物プランクトンが大量に繁殖したアオコの現象です。
表面が植物プランクトンでおおわれてしまうと、水中や底まで光が届きにくくなり、水中や底に、植物プランクトンが少なくなりますから、水中に溶けている酸素の量が不足します。また、植物プランクトンは、夜間には光合成をしませんから、ますます水中に溶けている酸素の量が不足して、魚類などは死んでしまいます。
そして、植物プランクトンも死んで死骸が底にたまると、底にいるバクテリアによって分解されますが、その時にも酸素が消費されますので、さらに、水中は酸素不足になります。
(2) では、豊富にあるケイ藻が光合成を行いますから、食物連鎖のバランスが保たれて、魚も生息しやすいのです。
富栄養化が進むと、植物プランクトンや藻が大量に発生します。そして水が濁り、見た目にも汚くなってドブのような悪臭を放ちます。
そこに住んでいる魚が捕れなくなるどころか、養殖もできなくなります。
アオコの現象の他には、赤潮や青潮の現象も見られます。
(参考サイト:赤潮と青潮)
http://bit.ly/QWarBb
では、富栄養化はどうやって起きるのか?
原因としては、生活排水に含まれる窒素やリンなどの栄養物質が水中で増加することが考えられます。
ちなみに、窒素やリン酸やカリウムは、肥料の三要素とも言われます。肥料にするぐらいですから、栄養が豊富です。
植物プランクトンは光合成しますが、自分では、窒素・リン酸・カリウムを作り出すことができませんから、それらの栄養物質が含まれた生活排水によって植物プランクトンが大量に発生してしまうのです。
富栄養化を防ぐにはどうすればいいか?
生活排水に含まれる窒素やリンなどの栄養物質を減らす努力が必要ですね。
私たちにできそうなことは、例えば、食後のお皿には、調味料の栄養分が残っていたりしますから、ある程度、汚れを拭き取ってから水洗いするのがよいと思います。
使用済みの天ぷら油を排水溝に流さないことも大事です。自治体によっては、廃食油を回収する運動をしているところもあるようです。
洗剤の中には、リン酸が含まれたりしますので、成分表を見て、なるべくリン酸が含まれないものを買うことも大事です。
(参考サイト:石鹸・複合石鹸・合成洗剤の表示例の比較)
http://www.sekken.genoa.jp/content/photo/ex6.htm
また、ヨシというイネ科の植物は、水中の窒素やリンを養分として吸い取るはたらきがありますので、富栄養化を防ぐことが期待されます。
(参考サイト:ヨシとは?)
http://www.ohmi.or.jp/yoshi/03.html
なお、富栄養化の問題でよく使用される水質の指標を以下に3つ記します。
・
COD (化学的酸素要求量 Chemical Oxygen Demand)
主に、海域や湖沼の水質の汚濁を調べる時に用いられます。
・
BOD (生物化学的酸素要求量 Biochemical oxygen demand)
主に、河川の水質の汚濁を調べる時に用いられます。
・
TOC (全有機炭素 Total Organic Carbon)
最近では、水中の有機物濃度を示す指標として用いられます。
(参考サイト:水の有機物指標の概要)
水質指標
http://www.toraytechno.co.jp/technical_data/pdf/0502.pdf
なお、近年では、富栄養化の他に、地球温暖化が湖底の低酸素化につながる報告があります。
密度の違いで、暖かい空気は上昇して、冷たい空気は下降して、対流するように、
湖面付近の水温と、湖底の水温に差があると、湖水が対流するのですが、
地球温暖化によって、冬の水温が低くならないと対流がおきにくくなり、湖底に酸素が届きにくくなるのです。
さらに勉強したい人は下の参考サイトを御覧ください。
(参考サイト:琵琶湖湖底の低酸素化)
http://bit.ly/Rm7EyB
(参考サイト:地球温暖化と琵琶湖の生態系)
http://bit.ly/QW9dWy
「温暖化の湖沼学」
琵琶湖でも冬季直混合が阻害され、深層部の貧酸素状態が観測される等,温暖化は湖沼の水質や生物相に深刻な影響を及ぼす。所在環境や水塊としての大小・深浅等により,独特の物理・化学機構を持つ湖沼に対する環境変動の影響を明らかにした初の成書。湖沼の物理や生態についての基礎的知識も詳しく解説。
(#)クイズ問題で引用した書籍「Quizでわかる生物」
「Quizでわかる生物」
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